心理トリガーを知っているという武器

現代社会においては、インターネットやスマートフォンの普及によって目まぐるしくITが発展し、追い打ちをかけるようにAI(人工知能)なるものがジワリジワリと実生活の中に入ってきています。

「AIの急激な発達によって現在の仕事のほとんどがロボットによって行われ、近い将来、10人中9人が今と違う仕事をしているだろう」といった話や、「10年後に90%の確率で様々な職業がなくなる」といった話は、あなたも聞いたことがあると思います。

これを読んでいるあなたも、ビジネスにおいて少なからずこれからの未来に不安を感じたりしているのではないでしょうか? しかし、どんなにITやAIが発達したとしても絶対に変わらない事実があります。

それは・・・商品やサービスを購入するのは絶対に人間であるという事実です。 つまり、商品やサービスを購入するのが人間である以上、人間の購入したいと思う欲求や購買心理を知って、それをビジネスにおいて使えるというスキルを養っておくことは、今後どんなにITやAIが発達したとしても、非常に強力な武器になるということです。 こ

れから、ビジネスをより成功させるための強力な購買心理テクニックとその具体的な使い方をご紹介いたします。 これらのテクニックを単に知識として知っておくのではなく、いくつかでもいいので是非とも実践して頂き、売上アップを実現し続けて下さい。ただし、悪用厳禁ですよ!

一貫性の原理

一貫性の原理とは、人間には自分の行動や発言、信念などに対して一貫した態度をとりたいという心理がはたらくという原理のことをいいます。

これは、貫くという態度が社会的に高い評価を得られるという考えだったり、複雑な社会生活においてより簡易な行動決定ができるという考えに基づくといわれています。 この原理に基づく心理効果には以下のものがあります。

テンション・リダクション効果

テンション・リダクションとは、一定の緊張状態がほぐれた直後においては人の注意力は疎かになっているという状態のことをいいます。相手の注意力が疎かになったところに、こちらの要求をもちかけると相手に承諾してもらいやすくなります。

例えば、お客が何か商品やサービスを購入しようと検討しているときは、緊張した状態にあります。それが高価な商品やサービスであればあるほどその緊張が高まります。

しかし、その商品やサービスを購入するという決断をしたあとはその緊張状態が解消され、注意力が疎かになるのでセールスに対して抵抗感を持たなくなります。 つまり、お客さんが購入を決断し、緊張状態から解放されて注意力が疎かになったその時にすかさず「より安い商品」の購入を“ついで買い”として販売してみるのです。そうすれば普通にその「安い商品」を販売するときに比べて購入率は上がるでしょう。

ポイントは最初に購入を決断した商品よりも「より安い商品」を売るということです。同じくらいの値段の商品やより高価な商品を売ってしまうと、お客さんは再び緊張状態になってしまうため購入してもらいにくくなります。「より安い商品」としてふさわしいのは最初に購入を決断した商品に関連した付属品やオプション品などです。 お客さんが購入を決断した後のタイミングでそれに関連した商品をセールスすれば購入単価を上げることができますので、是非トライしてみて下さい。

【具体例】
★対面で車が売れた→ついでにカーナビはいかがですか?と持ち掛ける
★電話でダイエット用運動器具の注文を受けた→安価でダイエット用サプリメントもお求めいただけますよ!と案内する
★インターネットで商品購入ボタンが押された→「他の人はこんな商品も購入しています」というラインナップが表示される(←Amazon、これやってますよね?)

フット・イン・ザ・ドア・テクニック(段階的要請法)

フット・イン・ザ・ドア・テクニックとは、交渉時などにおいて、最初は相手が承諾しやすい小さな条件の要求から持ち掛けて、相手の承諾を得つつ、徐々にこちらの要求を大きくしていき、最終的にはこちらの最も求める条件を相手に承諾してもらうという手法です。

訪問販売員がお客の家のドアに足を挟み込んで、セールスを拒否できないようにするという動作に由来した言葉です。 このテクニックを使うとお客さんの購買意欲を引き出しやすくなります。

例えば、お客さんに何か商品を買ってもらいたいときにはいきなり商品を売るのではなくて、まずは話だけでも聞いてもらう(「少しお話だけでも聞いてもらえませんか?」というやつです)。 次にパンフレットだけでも見てもらう→実際に商品を手に取ってもらう→商品の良さに共感してもらう・・・。

という具合にお客さんのYESをひとつずつ引き出していき、最終的に購入につなげていくのです。 ポイントはお客さんのYESという返事(承諾)をいかにして少しずつ段階的に貰っていけるかということです。

ただし、この手法は非常に有名なので、お客さんが途中でYESという返事をしなくなるということもあります。なので、このテクニックのみを単独で使うのではなく、後にご紹介する返報性の原理という心理テクニックと併用することでより効果を高めていくといいでしょう。

これは、わかりやすい例でいうと、百貨店の地下などでよくある試食コーナーです。
つまり、試食というこちらが承諾しやすい要求を販売員のおばちゃんは勧めてきますよね?試食なのでこちらはYESと言ってひとつ食べます。
するとおばちゃんは次にもうひとつ別の味の試食も勧めてきます。こちらもまたYESと言ってありがたく試食させてもらいます。するとおばちゃんは、「おいしいでしょ?」と聞いてきます。こちらは「はい、おいしいです」と答えます。

この時点でおばちゃんは3つのYESを獲得しています。こちらは2回も試食させてもらったし、「おいしい」とも言ったので、そのまま買わずに立ち去るのは何か気が引ける感じがします。いや、気が引けるというよりもすでに購入したいと思っていることすらあります。これがフット・イン・ザ・ドア・テクニックと返報性の原理を組み合わせた強力なテクニックなのです。

【具体例】
★試食
★まずは無料でお試し品を提供し、その後に本命商品の販売につなげる
★安価なお試し価格での販売後にセールスを行い、正規の価格で購入してもらう

ローボール・テクニック(承諾先取り法)

ローボール・テクニックとは、相手にとって魅力的な条件だけを先に提示して相手の承諾を得たあとに、相手にとって悪い条件を提示してその条件を承諾してもらう手法のことをいいます。

後出しじゃんけん的に悪い条件を提示された相手は、先に魅力的な条件を承諾してしまっていることから、一貫性の原理が働き、その後に提示された悪い条件をも仕方なく受け入れてしまうことがあります。 最初に受け取りやすい低いボールを投げられて、それを受け取ったら、後から受け取りにくい高いボールを投げられても受け取ろうとするという動作に由来した言葉です。

よくある例として挙げられるのが、衣料品店で大きく掲げられた『80%OFFセール!』という看板などです。
お!80%オフなのか!と店内に入ってみると、実は80%オフの商品はほんの一部だけでほとんどが定価のままだったりするやつです。

ほかにもみなさん経験があると思います。
例えば、『パソコン本体1円!』とかいった広告です。よくよく話を聞いてみると2年間は指定のプロバイダーとの契約が必要で・・・解約には違約金が必要で・・・とかもろもろの条件が付けられていますよね?
あのような販売手法はローボール・テクニックが使われています。

これも非常に強力な心理テクニックですが、この手法を使うときには注意が必要です。つまり、この手法を使うと、その気がなくても相手に「騙された!」と思われてしまう危険性があるということです。

したがってこのテクニックは、正直いってあまりおすすめできませんが、使うとするならば、ある程度お客さんとの信頼関係を構築した上で使うのがよいでしょう。
また、不利な条件と同時に他に何かお客さんにとって魅力的な条件も同時に提示してあげられないかを考えてみて下さい。
そして、なにより不利な条件を受け入れてくれたお客さんのアフターフォローを必ず継続していくということが重要です。

ディドロ効果

ディドロ効果とは、人はそれまでの生活の中で手に入れたことがないような高価なものや高品質なものをひとつ手に入れてしまうと、それに合わせてすべてを同じような高価・高品質なものに取り揃えたくなるという心理効果のことをいいます。

18世紀のフランスの思想家デュ二・ディトロ氏という人が、それまで手に入れたことがない高級な洋服を知人にもらいました。彼はその洋服をとても気に入ったので自分の部屋に飾りました。すると、周りの物があまりに貧相に感じられたので、彼は家具などを次々と高価なものへと買い替えていきました。そして、ついには彼の部屋は高価な物で埋め尽くされました。彼のこの実話に基づいてこの名がつけられたそうです。

これは、いったん手に入れた高価なものへすべてを合わせるたくなるという心理です。これも一貫性の原理の一種です。この心理効果は単にモノだけではなく、環境や人付き合いにも及びます。 セット販売やシリーズ販売などはこの心理効果を応用したものです。

例えば、気に入ったゲームソフトがシリーズで販売されていたりすると、そのシリーズのソフトすべてが欲しくなったりしますよね?
また、ゴルフクラブのうちのパターのみが高級なもので、そのほかは安もののクラブであったとしたら、なんのストレスもなくゴルフを楽しめますか? きっとすべてのゴルフクラブをパターと同等レベルの高級なものに買い替えたくなると思います(このとき、高級なパターをほかのクラブに合わせて安もののパターに替えたくなるという風にはほとんど思わない、という点がポイントです)。

ビジネスにおいてこの心理効果を使うのであれば、あなたの商品をシリーズ化できないか、またはセット販売はできないかを考えてみて下さい。 そして、セットの一部やシリーズの一部を安価な価格に設定しておいて、それを購入したお客さんに、実はこの商品はこういう高級セット(シリーズ)の一部なんです・・・ほかもいかがですか?とアピールしてみて下さい。きっと取り揃えてくれるお客さんがいると思いますよ。

収集欲求

人間の心理には収集したいという衝動があるといわれています。あなたもこれまでに一度は何かのコレクションをしたことがあるのではないでしょうか? これも一貫性の原理と結びつくもので、強力な心理トリガーです。

腕時計を一番よく買うお客さんはすでに腕時計を持っている人だといわれます。 コレクションといえば、フィギュアや切手などを思い浮かべますが、人が収集したいと思う商品はなにも典型的な趣味嗜好品だけではありません。

たとえば、何かの専門的職業の方が絶対必要とまではいえない仕事道具を収集したくなるという衝動もあります。 あなたの商品やサービスを購入したお客さんが同じような商品やサービスをもっと購入したいと思っていないか、よく考えてみて下さい。

【具体例】
★趣味嗜好品全般(切手から車にいたるまで幅広い)
★職人さんの使う電動工具
★様々な便利グッズ
★自己啓発やビジネスの本

 

返報性の原理

返報性の原理とは、人は他人から何かを与えられるとそのお返しをしなければならないという感情が生まれるいう心理的原理です。

なぜ人間にこのような心理がはたらくかというと、人間が社会性をもった生き物だからです。つまり、人は他人と協力し合って生きていく生物なので、他人への恩義というものが重要だという思いがプログラムされています。
なので、他人から何か価値あるものを提供されたらそのお返しをしないと「罪悪感」を感じるのです。その「罪悪感」を解消するためにお返しをしなければならないという感情を持つのです。

ビジネスにおいてこの返報性の原理は非常に強力な心理テクニックといわれています。実際にあらゆるビジネスにおいてこの心理テクニックが使われていることはあなたも実感していますよね?
この心理的原理に基づいて何か商品やサービスを購入した経験があると思います。

返報性の原理をビジネスでうまく使うためのポイント

返報性の原理をビジネスでうまく使うためのポイントは5つあります。

1.相手にとって価値あるものを提供する

相手に提供するものやサービスが相手にとって価値を感じられるものでなければ相手はお返しをしなければならないとは思いません。極端にいえば、不要なもの与えられると人はかえって迷惑だと思うことすらあります。たとえ不要なものとまでは思われないとしても、相手が価値を感じなければお返しをしないことによる罪悪感を感じないのです。これは何も高価なものを提供しなければならないということではありません。「気が利くものを与えてくれた!」「ここまでのものを与えてくれるの⁉」と相手に思ってもらえればいいのです。 また、提供するものはお金そのものではなく、何かのサービスでなければなりません。

2.先にこちらが提供する

相手がこちらに要求してきてはじめて提供するというのでは効果がありません。何も要求していないのにこんな価値あるものを無料で提供してくれたんだ!と相手に感動してもらえてはじめて効果が高まるのです。 たとえば、無料説明会や無料相談、無料サンプルなどのお申込みを「受付けています」というのは返報性の原理の点からいうと効果がありません。これは前に述べたフット・イン・ザ・ドア・テクニックとしての効果はあると思いますが、返報性の原理ほどの強力なものではありません。 したがってあくまでこちらから能動的に価値を提供していくべきなのです。もし、相手から求められて何かの価値を提供する場合は、相手が求めるもの以上の価値を提供して相手に驚きや感動を与えなければなりません。

3.一方的な価値提供

返報性の原理を用いた心理テクニックは相手に感謝の気持ちを生じさせなければならないので、相手に対するお礼としての価値の提供ではありません。あくまでこちらから一方的に価値を提供しなければなりません。

4.見返りを期待しない態度

相手に感謝の気持ちを生じさせなければならないということは、当然に見返りを求めているんだろう?と相手に感じさせてはなりません。純粋に相手に感動と喜びと感謝の気持ちを持ってもらえるように価値を提供しなければならないのです。

5.競合他社以上の価値提供

競合他社がどのような価値を提供しているのかをリサーチして、それより高い価値を提供できれば、相対的にお客さんの感動や感謝の気持ちは大きくなります。したがって、競合他社の価値提供を常に意識して、競合他社以上の価値を提供できないかを考えることが重要です。

 

ビジネスにおける返報性の原理の使い方

①秘密性の高い情報や価値ある情報をブログや動画で公開してファンになってもらう
(さらに価値ある情報を提供するためにメールアドレスやLINE登録をしてもらう)

②使用方法や効果が予想外に丁寧にわかりやすく記載されている無料サンプルを提供する

③商品やサービスを購入してくれたお客さんに予想外の無料サービスを提供する

④お客さんの予想を上回るアフターサービスを提供する<

 

ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック(譲歩的要請法)

ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックは返報性の原理を応用した心理テクニックです。
相手が承諾できないような大きな要求を最初に提示し、それが断られると徐々により小さな要求をしていき、相手に何度も断らせて最終的にこちら望む要求を相手に承諾させるというものです。

つまり、わざと最初から相手が承諾できない大きな要求を何度かしていき、何度も相手に断らせ、こちらが何度も譲歩したというアピールをすることによって、相手は何度も譲歩してもらったのだから最終的に提示された要求は承諾しようと思わせるものです。
セールスでお客さんの家を訪問した際に、お客さんがドアを開けたら最初から顔をドアの中に入れてしまうという描写からこのような名前が付けられています。

商品やサービスの購入をお客さんに決断してもらう際に、最初に了解してもらえないような条件を何度か提示します。お客さんにそれを何度も拒否してもらうことで最終的に当初希望していた条件を提示します。
すると、最初から希望条件だけをストレートに提示してセールスするよりも購入してもらえる確率が上がります。

 

まとめ

ビジネスにおいてもっとも使われている心理トリガーがここでご紹介した一貫性の原理と返報性の原理です。
どちらも非常に強力な心理トリガーなので、あなたがセールスをしたり広告コピーを書いたりするときには是非とも意識してみることをおススメします。
今までとは違った営業トークやセールスコピーを思いつくはずです。